自宅のガレージに到着したのは、夜も深まった頃だった。
慣れないステアリング、少し緊張しながらも最高の時間を過ごした僕は、そっと911をガレージに滑り込ませた。

キーを回し、エンジンを止める。
しかし、僕はすぐには降りられなかった。
ガレージの中には、先ほどまで一緒に駆け抜けたポルシェの熱気と、微かに残るエンジンの余韻。
アクセルを踏み込んだ感触、シフトを操ったときの手応え、耳にこびりつくあの水平対向6気筒のサウンド。
それらすべてが、まだ僕の身体の中を駆け巡っていた。
胸の奥からじわじわと湧き上がる高揚感。
これが、「911を所有する」ということなのか――。
ただ車を手に入れただけではない。
ポルシェと生きる。
まさに、人生そのものに影響を与える存在なのだと、深く実感した瞬間だった。

「所有」ではなく「生き方」
911に乗る前、僕も漠然と「ポルシェオーナーってかっこいいな」と思っていた。
高級車、ステータス、スポーツカー。そんなイメージが先行していたのも事実だ。
でも、実際にキーを受け取り、ハンドルを握り、自分の意志でアクセルを踏み込んでからわかった。
911は、単なる“高級車”ではない。
このクルマは、オーナーに「生き方」を問いかけてくる。
どんな道を選び、どこに向かい、どんな瞬間を味わうのか――。
911は、それらすべてに寄り添いながら、共に生きていく存在だ。

だから、オーナーの生き方そのものが911に刻まれていく。
きっと10年後、20年後、僕はこの996Carrera 4Sと共に、たくさんの景色を見て、たくさんの思い出を作っているだろう。
そんな未来を想像すると、自然と顔が緩んだ。
ガレージで過ごす、特別な時間
ガレージに停めた911のボディにそっと手を置く。
冷えかけたエンジンの鼓動が、まだ微かに伝わってくる。
家の中に戻れば、日常が待っている。
でも、今この瞬間だけは、日常と非日常の狭間にいるような、不思議な感覚だった。
誰に見せるわけでもない。
SNSに投稿するためでもない。
ただ、自分のために、この瞬間を噛みしめる。
911と過ごす時間は、間違いなく、僕にとってかけがえのないものになると確信した。
納車当日の記憶
あの日のドライブは、ただ目的地を目指して走ったわけじゃない。
自分の心が赴くままに、好きな道を選び、好きなペースで走った。
街の灯りを背に走り出し、少し郊外まで足を伸ばした。
996のコンパクトなボディ、ダイレクトなステアリング、自然吸気エンジンならではのレスポンス。
991とはまた違う、軽快で機械的なフィーリングに、心の底から酔いしれた。
現代の911は間違いなく素晴らしい。
でも、この996には、人間と機械が対話する楽しさがまだ色濃く残っている。
一言でいえば、“生き物感”があるのだ。
この感覚を味わいたかったから、僕は996を選んだ。
991の洗練された乗り味に魅了されながらも、最終的に自分の心を動かしたのは、もっと原始的で、もっと純粋なフィーリングだった。
これから始まる「911Life.」
納車の日は、ただ911が家に来た日ではない。
僕にとって、“911と共に生きる人生”が始まった記念日だ。
この先、きっといろんなことがあるだろう。
トラブルもあるかもしれない。
IMS問題やシリンダーかじりといった、996ならではのウィークポイントにも向き合っていかなければならない。

でも、それさえも含めて、“911Life.”なのだと思う。
嬉しいことも、悔しいことも、全部ひっくるめて、僕はこのクルマと生きていきたい。
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