
前日の夜は、ほとんど眠れなかった。
子どものころ遠足の前に眠れなかったのと同じように、楽しみと興奮で頭が冴えてしまっていた。いや、それ以上だった。だって明日は、自分のポルシェ911が納車される日。ずっと夢見てきたあのクルマが、いよいよ僕のものになる。
納車当日、少し早起きして鏡の前に立つ。どんな服を着ていこうか悩んだ。ちょっといいスニーカーに、シンプルだけど清潔感のあるシャツ。まるで初デートのような気持ちだった。
電車に揺られながら、スマホの写真フォルダを見返す。何度も見た在庫写真、何度も読み返したスペックシート。納車が決まった日から、ずっと胸が高鳴り続けていた。

キーを受け取る瞬間
販売店に到着し、受付の方に通される。手続きを済ませたあと、「お待たせしました」と言われて、いよいよガレージのシャッターが開く。
そこには、僕のポルシェ996カレラ4Sが静かに佇んでいた。モダンとクラシックが共存する、唯一無二のフォルム。深いグラファイトグレーのボディが光を反射し、まるで呼吸しているかのように見えた。

「おめでとうございます」と差し出されたキーは、思ったよりも小さくて軽かった。でも、その重さの中には、夢、憧れ、そしてこれからの物語すべてが詰まっているような気がした。
手に持った瞬間、言葉では言い表せない感情がこみ上げた。震えた。これは、僕のポルシェなんだ。
初めてのエンジン始動
運転席に座り、ドアを閉める。ドスンという重厚な音。
キーを差し込み、ひねる。
「ブォォォン!」
水平対向6気筒が目を覚ました。背中から響くような低音、まるで「ようこそ」と挨拶されたようだった。
インテリアは時代を感じさせる部分もあるけれど、それがまたいい。シンプルで無駄がなく、運転することに集中できる空間。
手にしたステアリングは、想像していたよりもしっかりとしていて、まさに“機械を操る”感覚だった。

走り出す、僕の物語
ゆっくりと駐車場を出て、アクセルを踏み込む。
「ドゥワァァン」という乾いたエンジンサウンドが背後から伸びてくる。軽やかなのに力強い。
思わず笑ってしまった。「なにこれ、ヤバい…」って。
911を運転している。夢じゃない。現実だ。
どこに行こうかなんて考えていなかった。ただ、クルマを走らせたいという純粋な気持ちに従って、街を走った。信号待ちでも、コンビニの駐車場でも、視線を感じる。でも不思議と嫌じゃない。むしろ、誇らしい気持ちになった。
ハンドルを握りながら、ふと「この瞬間をずっと待っていたんだな」と気づいた。
25歳。世間ではまだ若いかもしれない。でもこの911は、間違いなく僕の人生の一部になる。
そして「911Life.」が始まる
自宅に戻り、ガレージに911を停めてエンジンを切ったあとも、しばらく降りられなかった。
さっきまで走っていた道、アクセルの感触、エンジン音が耳に残っていて、体からアドレナリンが抜けない。
ポルシェ911を所有するということが、ただの所有ではなく、“生き方”なんだと実感した瞬間だった。
納車されたその日から、僕の“911Life.”が本当に始まった。
でも、このクルマの魅力は、ただ所有するだけじゃ終わらない。
これからも「my911story」をよろしくお願いします!
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